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今西玲子インタビュー vol.2

_今回Aki Uedaとの共演となりますが、すでに何度か共演されてるようですが、以前共演されての感想をお聞かせください。
Akiさんとは2004年に、友人の引き合わせで『Central East Tokyo』というアートフェスティバルで初めて共演させていただきました。お互い海外から帰国したばかりで勢いがありましたね。Akiさんはベルリンにもおられたので、ヨーロッパの音楽シーンにも通じていたため、いわゆるインド音楽の人と邦楽の人、という敷居を感じることが無かったのを覚えています。つまり音色から様々な音楽的バックグラウンドを感じることができたんです。
曲作りにおいてはインド音楽のラーガやカウントを取り入れたりして、当時の私には無謀な挑戦でしたが、とにかく楽しくてあれよあれよと言う間になんだこれは!というこれまで聴いたことのない素敵な曲ができていました。当時から今も変わらず感じるのは、素晴らしい演奏テクニックもさることながら、Akiさんのメロディーラインの美しさ。それは即興的に奏でられるものであっても琴線に触れるセンスを感じます。
聴いてくださる方々から、私の箏と彼のシタールの音色の絡みがとても良いと言っていただけるのは、きっとそういう部分で共鳴し合えるからではないでしょうか。
その後Akiさんとは、2009年に今度は私の企画で『水都大阪2009』というアートフェスティバルで共演していただきました。その時もほぼオリジナル楽曲を演奏したのですが、お互い前回のようにギラギラした感じではなく、Akiさんはその頃にはより古典に重点を置かれるようになった印象を受けました。同時に、SHALAさんという伴侶を得て、新しいインスピレーションに満ちていて、オリジナル楽曲においても世界観が大きくなったと感じました。
今回は前半にインド古典音楽、後半にオリジナル楽曲と、そんなAki Uedaの両面を味わい尽くすことのできる素敵な内容となっております!

_今回の近江楽堂でのライブは、オリエンタル楽器のコラボレーションですね。それぞれに歴史がある楽器の共演であり、Aki Uedaはそこが「難しい」と語っていました。その辺りをふまえての意気込みをお聞かせ願えますか。
音楽を歴史や文化、伝統でしか捉えられないのであれば、今私がやる必要は無いと思うのです。例えば今では箏曲の代表とされる『春の海』は1929年、西洋音楽に影響を受けた宮城道雄によって、箏と尺八、あるいは箏とバイオリンのために書かれました。決して伝統的な邦楽ではないけれども、すでに伝統音楽として受け止められています。箏とシタールが出会うのも現代ならではの恩恵のひとつとして、自然に楽しみたいと思います。
本当に心に響く音楽が生まれるかどうかは難しいですけど、やりがいがある挑戦だと感じています。お正月の定番になる可能性だって・・・!というわけで、独特の間や美意識を有する古楽器同士、各々に刻まれた型と自由な手法を駆使しつつ、斬新なセッションを試みます。

_「TUNING FOR LIFE」というイベント名はポジティブな転機という意味を込めたそうですが、その言葉の流れにそれぞれの演者が乗った演奏を期待してます!ありがとうございました!
ありがとうございました!正に今の私にピッタリなタイトルなのですが、ここでまたAkiさんと再び共演する機会をいただけたことに感謝しています。Akiさんとの共演を通して教えていただいたことや、生まれたものは私の音楽の中に生きていますし、これからどんな影響があるかも楽しみなところです。

TUNING FOR LIFE CONCERT/Apr.20.2012
interviewer:sin Robin ota (in project.E,inc)
今西玲子インタビュー vol.1

©畠健太郎
_今西さん初めまして、project.E,incの太田です。宜しくお願い致します。まず今西さんを初めてご覧になられる方々のために箏奏者までの道のりや海外での生活などをご紹介いただけますか。
初めまして、どうぞよろしくお願いします。
箏は母がしていたので幼少から親しんでいましたが、先生についたのは小学5年生になってからでした。4歳からピアノを習っていて、聴いた曲をわりとすぐ弾けたり、空想しながら即興で弾いたりできたので当時はそちらの方が楽しくて、箏はお稽古事という感じでした。箏が面白いと感じ始めたのは実は大人になってエレクトロミュージックやDJカルチャー、現代音楽など幅広い音楽体験を経てからです。それらの発想と箏の間に自然といくつも親和性や対比を見いだし始めました。
箏は原始的な本当にシンプルな構造の楽器で、フレットなども打たれていません。これが素晴らしいんです。この楽器は奏者の声の調子や精神に寄り添うように本来オープンです。毎回13本の絃にひとつずつ琴柱(ことじ)と呼ばれるブリッジを立てて音を作っていく作業はワクワクします。無の状態から音を見立て配していく自由。さらに左手で絃を押さえたり揺らしたりすることで音は自在に作れます。子どもの頃探していた鍵盤と鍵盤の間の音が無限にある。そんな自由やアナログの完璧に滑らかな美しさに気づいたのも、私の場合電子音楽などを通してでした。
その後、箏もピアノも離れてロンドン大学に留学したのですが、縁あっていつの間にやらイギリスでも箏とピアノが家にある環境になって、自然と周りのミュージシャンとセッションしたりしていたという。民族音楽学という学科にいたのでイギリス人の尺八奏者もいましたが、それはもうあらゆる国の民族楽器の演奏家がいて、シタールやタブラと一緒に演奏したのもその頃が初めてでしたし、アフリカのコラを少し習ったり、ヨーロッパで唯一だった沖縄音楽のバンドに入ったり、中国の古琴や韓国の伽耶琴、コムンゴといった箏の親戚と出会えたのもロンドンという国際都市ならではだったと思います。
一方でロンドンはクラブカルチャーや現代音楽のメッカでもあって、民族音楽と電子音楽と西洋のクラシック音楽が見事にごちゃ混ぜになって面白いシーンができていたりして、私も自然と古典だけでなくエレクトリックな箏を演奏したり、コンセプチュアルなパフォーマンスをしたりしてました。日本を出るまで、尺八、三味線の他はピアノやフルートくらいとしか共演したことが無かったですから、そうした環境はかなりエキサイティングで、箏という楽器について多くのインスピレーションを引き出してくれました。イギリスではエイジェンシーからの仕事を受けたりもしていましたがプロという意識はなかったです。
帰国してからしばらく演奏活動などしてなかった時期もあって、いつから箏奏者になったのか、なっているのかすら分かりませんが、2007年頃からいろんな方とのご縁で面白いプロジェクトに参加させていただくようになったりして、ここ2、3年はライブの数が次第に増えてきたという感じです。1ヶ月に11本ということもありましたけど、私は車の運転をしないので箏を抱えての移動が大変で、、、とにかく好きで夢中でやってきた気がします。
_ロンドン在住の時、現地の方々の箏の認知度、また初めて演奏された時のオーディエンスの感触はどのようなものでしたか。
詳しいことまで分からなくても、日本の楽器として箏の認知度はわりと高いんじゃないでしょうか。もちろん初めて実際に目にする方がほとんどなので大変喜ばれます。大人気です!ミュージシャンはすぐに、こんな弾き方はどうだ?とか言っていろんな弦楽器の奏法を箏に応用しようとしたり、抱腹絶倒のツールを使ってみせたりしてくれるんですが、これが毎回目から鱗なんです。私の変な奏法はたいていそんな外国人とのやりとりから生まれたものです。
たぶん日本人だとお箏は伝統楽器で気軽に触れてはいけないとか、難しいイメージが先行してしまうところが、外国人にはそういった既成概念が全くないので反応が本当に素朴で面白いですし、ハッと気づかされることも多いです。

©Toru Imanishi
_経歴を拝見するに、色んなジャンルとのコラボレートを行なっておりますね。実際、箏を演奏する上で、ジャンルレスな音世界というものにどんな想いを抱いていますか。
それは私自身が、電線の網の目の上に広がる空みたいに、価値観や思想といったものを超えた真理という解放区はどこにでも広がっていると感じていて、今は音楽においても自然とそこへフォーカスが向けられている反映だと思います。
一方で、そうした世界の中で他と容易に和することのできない個性を思い知ったりと、箏という楽器の性質についてより深く理解していく過程であるように思います。
_私も電子音楽が好きで、TOMATOやWARPには沢山の影響を受けました。そこで今西さんの好きなエレクトロミュージック・アーティストを教えて頂けますか。
枚挙にいとまがないので、、、どうしましょ!
TOMATOは英国を代表するクリエイター集団ですが、Underworldもそのメンバーですよね。『Beaucoup Fish』はちょうど私がいた頃で思い出深いアルバムです。
当時私はTOMATOのファミリーのようなイギリスの気鋭ファッションフォトグラファーのクルーと一緒にいたのですが、このアルバムには彼らのホームパーティーでの声やふざけた台詞なんかも入っていて、できた時とても盛り上がったのを覚えてます。世界のアンダーワールドも本当に高層ビルなんかでなく、根を張った暮らしの中から音楽を創っているんだとリアルに感じました。
それからTOMATOのサイモン・テイラーたちがアンダーワールドとは全く別のアコースティックバンドを作るんだということで、その最初のアルバムに私も箏で少し参加しました。
Johnny Conquest 『Uptown For The Americas』
日本では京都と吉祥寺を結ぶ「涼音堂茶舗」というアンビエント系電子音楽レーベルの皆さんと色々共演させていただいてます。私も毎夏出演している京都法然院での「電子音楽の夕べ」や、温泉地で開催される「渋響」「鳴響」など、地域の風土と共に音楽体験が育まれていくような素晴らしいイベントも継続されています。バシッと硬派な電子音楽のアーティストと、アコースティック楽器や声を素材に電子音楽とミックスしているアーティストが良い湯加減で集っているのも興味深いです。
_翻訳家としても活動しておられますが、どのような分野の訳をされておられるのでしょうか。
主に美術、音楽関連の日英和訳、英訳です。
音楽活動をこれほどしていない頃、NTT ICCや大阪府現代美術センターなどの企画展のカタログへの寄稿論文を英訳したり、作家のインタビューを訳したり、DJ Spookyの音楽論、ポール・D・ミラー(a.k.a. DJスプーキー)著『リズム・サイエンス』(青土社、2008年、上野俊哉との共訳)の和訳などとても興味深いお仕事をさせていただいてきましたが、近年は音楽の方が忙しく、まとまった時間がとれないのが悩みです。いくつか書籍翻訳もお声がけいただいていて、またじっくり取り組みたいと思っているのですが、、、。
_今西さんは感性豊かで好奇心もかなりのものだと感じました(笑)。音楽活動に限らず今一番やりたいことはなんでしょうか。
旅です!ロンドンから帰国してから、次に海外に行くとしたら演奏家としておもむきたいという思いもあって、日本をほとんど出ませんでした。箏というのが足かせになっていたのと、帰国後は自分の内面で文化的分裂があったので少し時間が必要でした。
でも今年は国内外いろんなところに行けそうです。3月末に新婚旅行でアリゾナ州セドナからモニュメントバレー、グランドキャニオンに行ってきました。アメリカは初上陸でしたが、カセドラルロックの頂上から見た広大な乾いた赤土と緑の景色や、オーククリークのほとりでネイティブインディアンと話したこと、歌や笛や太鼓のセッションを受けたこと、本当にすごい体験でした。実はこれまでにもバンジョーと箏のデュオをしたり、1月にはアカデミー賞を受賞したアメリカンフィドル奏者、ケイシー・ドリーセンを招いてのグラスルーツのイベントのお手伝いをしたりと、アメリカのルーツミュージックにも多少触れていたのですが、行って初めてこれだー!と感激しました。
今後の予定は、4月中は東京でいくつかライブがあって(旅のきっかけはこの『Tuning for Life Concert』です!)、4月末からゴールデンウィークにかけては福岡と長崎で初の演奏活動が、5月は京都と神戸で、6月にはなんとまたアメリカロサンゼルスで本当に初の海外公演が実現しそうで楽しみです。

Continued on next
interviewer:sin Robin ota (in project.E,inc)
Ice Blue 直前インタビュー
_ICE BLUEというタイトルについて説明して頂けますか。
SHALA: 氷河には何万年も前の、大気も空もとても綺麗だったころの地球の情報が、空気がとじこめられています。そのような時代からのメッセージを伝えたいという思いです。またブルーに癒しを求める意味もあります。
Aki: 2012年の幕開けに、ニュージーランドのフランツジョセフ氷河を訪れたこと、「LAST DAYS OF THE ARCTIC」というグリーンランドを舞台にした素晴らしい一冊の写真集と出会えたことが大きなインスピレーションとなっています。氷河の時代から生き残ってきた生命の強さや美しさを、今の時代だからこそ表現したいと思います。
_今回のダンスパフォーマンスでの表現はどのようなものになりましたか。
SHALA: 大自然のエネルギーと対象的に人間や街を描いたり、または白くまのファンタジーのコメディとアイデアは尽きず、カラフルでとても豊かな内容になりました。今年らしく龍も出てくるしね!祝福です!
Aki:脇を添えるダンサー、皆決して豊富なキャリアとともにスタートした訳ではないのですが、彼女達の成長も逞しいです!!
_今回も音源はフルオリジナルでしょうか。また今回は新しいメンバーも参加されてますね。
Aki:今回ピアノの岡野勇仁さんに初参加していただきました。その意味というか価値はものすごく大きいです!チェロの星さん、バイオリンの三木さん、パーカショーンのアツ志さんとも3度目の舞台公演になるので、息もバッチリです!!みんなのアレンジ力がすごくてアイデアを何倍にも膨らませてもらってます。
“A Butterfly Over Glacier” というテーマ曲を作ったのですが、氷河の上を飛ぶ蝶という架空の世界で、DNA(笑)というかスピリットというか、生命の持つ力強さと、何万年と続く時の流れを表現しています。オリジナル楽曲がほとんどですが、フォーレなど、数曲クラッシックのレパートリーがはいります。スペシャルゲストにも出演していただきます!
_さて、本番1週間前となりましたが、仕上がりの方はいかがですか。
SHALA: 直前になってもアイデアはまだまだ湧き出てきます。これぞクリエイティビティ、ということを共演者やスタッフのエネルギーが本番に向け集約されてゆくにつれ実感しています。そしてお腹がすいてたまりません。(笑)食べても食べてもどこかブラックホールにでも吸い込まれていくよう。クリエイティブエナジーってすごい!エナジーというよりもフォースといってよい、根源から来る力強さ!受け止める身体づくりがまず第一です。
Aki: 音楽は素晴らしいバラエティと力強いテーマができたかと思います。あと一週間、まだまだリハーサルも重ねるので、出演者、スタッフ一同頑張ります!!
_最後に当日起こしくださるお客様へ、ICE BLUEを観る上での注目点をいくつか教えてください。
SHALA:次にどんな展開がくるかまったくわからない点。
Aki:こんなのベリーダンスじゃないって言われれば、その通りかもしれません(笑)。アイスブルーというテーマは、映画やアニメでも表現できるかもしれない普遍的なテーマを扱ったつもりです。それを、生身のダンサー、演奏家だけで表現することはすごくチャレンジだし、生命をテーマにしたからこそ「生」の表現でこそ伝わるのではと思います。お芝居とは違い、明確なあらずじや台詞を追いかける舞台ではないので、みなさんの自由なイマジネーションがどのように喚起されるかとても楽しみです!!
interviewer:sin Robin ota (in project.E,inc)
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